無線化→消費電力削減と受け取れる確信犯的な記事。

なぜ今、LED照明/不動産業界に無線通信技術が求められているのか?
http://eetimes.jp/ee/articles/1201/24/news092.html
戸田建設と村田製作所、山田照明の3社は業界他社に先駆け、LED照明の無線制御システムの実証実験を開始する。「タスク&アンビエント照明システム」を無線で制御することで、消費電力を従来比で50%以上削減できるという。
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最近こういう記事が多いです。
記事を読むと、「『タスク&アンビエント照明』と『無線技術』の組み合わせで消費電力が50%削減出来る」というものと読めますが。
タスク&アンビエント照明で全体の消費電力を減らす、これは分ります。
ただ、『無線技術』を導入したからと言って、消費電力は減らせるわけではありません。むしろ無線モジュールの待機電力分、電力が余計にかかるでしょう。ここでは1モジュールあたり0.5wと読めますので、1フロア10台の器具があったとしたら、1フロア50w、5階建なら250w+PC等の電力が余計にかかります。
無線技術における一般的なモジュールは、有線でやっていたものをそのまま無線にするためだけのものです。使用されている信号はほとんどの場合従来のもので、それを『無線』として受け渡しするためだけにモジュールがプラスで必要になるということは、それだけプラスで電気を消費するということは誰でもわかる理屈です。
「無線=一括制御可能」という言い回しも気になります。有線でも同じことができるからです。むしろ無線でのメリットを提示するなら、設備の入れ替え無しに無線経由で自由にアドレシング等の基本設定が変えられるとか、『無線』にすると信号線を引く設備費が抑えられる等、その辺を強調するべきです。
ただそういったメリットに振れていないということは、無線でそこまで設定変更の機能が無いということと、無線モジュール付きの器具がまだ割高だということを暗に示していると思います。
「『無線』が人感センサーやスケジューラとの親和性が高い」ということも疑問です。有線でも同じことが出来る(出来ていた)わけですから、特別に無線が優れているという書き方には違和感を感じずには居られません。
無線技術を流用した照明制御自体が発展し、一般化していくのには大歓迎ですが、
それをなかば無理やり消費電力削減と結びつけるのはいただけません。
記者の方もメーカーのいうまま記事を書くような事はしないでほしい。
要は制御の仕方の問題で、無線=消費電力削減は間違いだということ。
少し考えれば、少し突っ込めばすぐに分る事です。
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ちなみに、こちらの記事の方がきちんとしています。
村田製作所、無線通信と電源制御による照明システムの省エネ効果実証実験開始
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/news/20120119/110640/
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zigbee概要についてはこちら(2005年の記事なんで、古いですが、基本的な考え方は変わっていないでしょう。zigbee2006,2007があるようです)
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/special/37/
あとこちら。
ZigBee入門
http://www.skyley.com/wiki/index.php?ZigBee%E5%85%A5%E9%96%80
あと、zigbeeが独自にLED照明制御用のオープンスタンダード「Zigbee Light Link」を開発している(GE,フィリップス、オスラムが共同推進)ということで、今上記の日本3社がやっていることはすでにガラパゴスになっていると言えるかもしれません。
http://news.mynavi.jp/news/2012/01/05/020/index.html

あと、zigbeeについての関連記事。ますます消費電力が削減ということに疑問符。
「ZigBeeは死んだ」―低消費電力の無線LANチップ提供のGainSpan社(2010年7月)
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20100720/184295/?ref=RL3
ZigBee IPと省電力無線LANのコストは同じ、米GainSpan CEO(2011年5月)
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110527/192175/
長くなりそうなのでこの辺で。

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