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古くない東京芸術劇場が大改修したワケ、という記事

夕刊フジの記事ですが、ヤフーニュースのため、保持する意味合いも兼ねて全文掲載。

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 【ライブなう】東京・池袋西口で威容を誇る東京芸術劇場が1年半もの大改修工事を終えて今月からリニューアルオープンした。10階建てに大・中・小の劇場を計4つ抱える文化の殿堂は1990年の竣工。外観を見る限り、それほど古くもないのに、なぜ改修したのか?

 仏作って魂入れず-ではないが、バブル期の箱物行政の弊害もあって、観客、出演者ともに評判があまり良くなかったからだ。

 まず、1階から最上階まで一気に駆け上がる巨大エスカレーター。子どもには人気だったが「怖い」「危ない」といわれ、作動中は警備員が付いていた。これを2台の乗り継ぎに改善。

 演劇中心の中ホール(プレイハウス)は、「セリフが聞きづらい」と不評だったため、客席をレンガ壁で覆うなど音響上の親密度を高めた。2009年、同劇場の芸術監督に就任した野田秀樹の意見もかなり反映されているという。

 そして、クラシック専用の大ホール(コンサートホール)も、天井が高すぎて、残響や音の溶け合い方に不満の声が相次いでいた。殺風景だった壁には棒状の木製補強材を加え、天井反射板を調整して、やわらかい反射音が客席に届くように工夫した。

 再スタートの前日。大ホールで、読売日本交響楽団と劇場の地元・豊島区にある東京音大合唱団らが参加したマーラーの交響曲第2番「復活」のリハーサルを聴いた。

 指揮者の下野竜也が、紡ぎ出す弦の濃厚なアンサンブルや、マーラー特有の耳をつんざくばかりの金管が咆哮する。

 このホールで何十回となく読響の公演を聴いているが、確かに音がまろやかになった気がした。次は満席の状態で確認したい。観客の衣服が音を吸収するからだ。

 客席の一部はレイアウトが変わっていたが、大ホールの席数1999は前のまま。広報に理由をたずねると、「2000に足らない1席はミューズ(音楽の神)に取ってあります」という答えが返ってきた。